「マウスはテロメアの長さが人間の10倍以上あり、体細胞でもテロメラーゼが活性化しています。しかし、1、2年でがんで死んでしまうマウスが多いのです。」

「テロメアが長くて体細胞でテロメラーゼが活性化していても、がんで死んでしまうのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。実は、体細胞でテロメラーゼが活性化しているというのが問題らしく、人間のがんの治療薬としてテロメラーゼを阻害する薬が開発されています。」

「テロメラーゼでがん細胞が増えるということですか」と町会長。

「細胞分裂の際にDNA鎖の末端が完全には複製されないことについて話しましたが、がん細胞もDNA鎖の末端が完全には複製されないのです。」

「要するに、体細胞でテロメラーゼが活性化していると複製されたがん細胞のDNA鎖の末端が修復されて、増殖するようになるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。がん細胞の多くは、テロメアが短いのにテロメラーゼが活性化しているため増殖を続けられると言われています。人間の体細胞でテロメラーゼが活性化していないのは、種としてではなく、個としての進化のようです。」

「がんになりにくいのは個としての進化だと思うのですが、体細胞の分裂回数が限られていると早く死ぬことになるので、個としての進化とは言えないのではないでしょうか」と町会長。

「確かに、テロメア数が2000になると、末端のループが形成できなくなって『細胞老化』と呼ばれる分裂しない状態になると言われているので、『細胞老化』だけに眼を向けると人間には寿命があるということになります。」

「体細胞の分裂回数が限られているのに、人間が不老不死になる可能性があるのでしょうか」と町会長。

2019/10/12